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20174/7

【Brexit日記】ロンドン以外に住むのなら【EU離脱期限まであと721日】(by hanako)

*【Brexit日記:英国がEUでなくなる日まで】ロンドン在住ハナコが見つめる「イギリスのEU離脱(Brexit)」。離脱完了までを生活者目線で見つめます。

2017年4月7日(金)

イマココ!」今のEU離脱ニュース:(2017年4月6日発行 Independentより抜粋):
ドイツ・メルケル首相率いるドイツキリスト教民主同盟所属の国会議員であり元欧州議会外務委員会委員長エルマー・ブローク氏がBBCの取材に対し、イギリスがEU離脱後にスコットランドが独立してEU再加入を希望した場合について語った。ブローク氏によると、スコットランドはすでにEUに加盟しており、EU法はスコットランドにおいて実施・適応されている政治的合意がすでに存在している。よってスコットランドがは再加入を希望した場合、「手続きはスムーズにいくのでは」と語った。

=====

イギリスに暮らし始めて以来、ロンドンにしか住んだことがない。

…といいつつ、実は我が家は微妙な場所に位置している。実は住所は「Surrey州」なので、ロンドンの隣の州とも言える。

しかし”いわゆるロンドン”の区分はちょっと難しい。住所の最後が「London」で終わる地域だけではなくて、行政区分としてもう少し広い「Greater London(大ロンドン、『シティ・オブ・ロンドン】と32のロンドン特別区)」がいわゆる「ロンドン」だからである。(詳しくはコチラをご参照下さい)

つまりウチはSurrey州だが、私が住んでいる地区はロンドン特別区の1つにあり、「Greater London」に入っているのでロンドンでもある。家の前の道にロンドンの象徴の1つである赤い2階建てバスが走り、最寄り駅でロンドン交通局のプリペイドカード「Oyster Card(東京で言う「Suica」「Pasmo」のようなもの)」が使える。でも同じ州でも「ロンドン行政区外」もある。

…と何でこんなことを長々書いているのかと言うと、「ウチは<一応>ロンドン内にある」と言いたいから(笑)。

この「一応ロンドン」が、この家(小さいマンション)を買うときのポイントだった。(家を買った時の戦いの記録はコチラから。6回連載)。イギリスは不動産をベースに資産を増やしていくのが基本の国なので、家の値段がものすごく高い。特にロンドンは高い。だから家を買うことに決めた時、私は旦那の人の通勤圏内であればもっと田舎に行ってもいいと思った。ロンドン中心部から遠くなれば私の仕事上多少不便になるかもしれないけど、でも私はフリーで家で仕事をしているのだから毎日通勤するわけじゃない。少しでも家の値段が安くなるのなら、多少中心部から離れてもいいと思ったのだ。

でも旦那の人(←日本人)は違う考えだった。

「ロンドンがいい。ロンドンに住みたい。ボクはロンドンが好きなんだ」

えっ!?  そ、そんなにロンドンが好きだったの?

知らなかったよ…。

旦那の人より私の方が少し在英歴は長いが、「どうしてもイギリス、どうしてもロンドン」という気持ちはあまりない。でも現実には日本語と英語しか話せないし、他の国のビザもないので別の国に行くというオプションは現在ない。仕事もロンドンだから成立している部分が大きい。

旦那の人も同じ状況ではあるが、「選んでロンドンに住んでいるし、住みたい」という気持ちを持って住んでいるらしい。それは幸せなことだと思う。住みたい街に自分の意志で住んでいるのだから。

こんな事情もあり「一応ロンドン」の境界線内に家を買った次第。そこそこ端っこだけど「一応ロンドン」(笑)。当面はココで暮らしていくと思う。

でも「もし、(日本以外の場所に)引っ越すなら?」という話はよくしている。仕事も生活もすべてロンドンにあるのだから具体的な話ではまったくない。ただの会話、ただの仮定の話としての「もし他の場所に住むんだったら、どこがいい?」

私も旦那の人もイギリスの永住権を持っているので、イギリス国内であればどこでも転居は可能だ。

イギリス国内だったら2人も何となく一致で「グラスゴー」。スコットランド最大の都市。

私は数年前に1度出張で行ったことがあるだけだが、行ったとき「ここなら住めるし、住みたいかも」と思った記憶がある。

街並みが好きだったし、石積みの建物の色あいも好きだった。こじんまりしている中に文化都市としての主張がある気もした。街が持つ「居心地の良さ」を説明するのは難しい。でもどこに行っても「この場所は好きだな」「あまり長くいなくてもいいかも」と割とすぐに思うタチなので、たぶん私の中に何らかフィルターがあるのだろう。

旦那の人は「行ってみて好きだったから」に加え、好きな「グラスゴー出身バンド」が多いというのがあるらしい。ベル&セバスチャンとかティーンエイジ・ファンクラブとか。

イギリス国外に住むとしたら?

ここからはビザがないので仮定を超えて妄想だ(注:イギリスの永住権EU永住権。イギリスの永住権を持っていても、他のEU国に無条件で住めるわけではない)。

2人共通で住んでみたいのは「アイルランド」。理由はグラスゴーとほぼ同じ。ダブリンには何度か行っているが、何度行っても「この街、好きだな~」と思った。

私は北欧だったらアイスランド。デンマークかフィンランドにも住んでみたい。それからドイツというより「ベルリン」が好き。10回以上行ったけど、本当に好きな街。

…そんな「もし」話をするのは楽しいものだ。たとえ実現しなくても、「もし」があるということは人生にオプションがたくさんあるということ。人生、この先まだまだ広がっているような気がして嬉しくなる。

そんな風に思っていた。

でも今回のEU離脱、そしてスコットランドの独立とその後のEU加入の可能性は、たくさんの人の「もしかして」に大きな影響を与えるニュースだ。EU離脱によって、私の「住める国オプション」は実は変わらない。でもスコットランド独立は(妄想レベルとはいえ)少し関係がある。

スコットランドが独立すれば、イギリスとは別の国。私たちイギリス永住権保持者が「もしかして」グラスゴーに引っ越すことはできなくなる。

これまでは自由にEU加盟国に居住できたイギリス人たち。他のEU国に住めなくなるばかりでなく、同じ国だったスコットランドにも住めなくなる?

私のイギリス在住日本人の友人(まだイギリス永住権が取れていない)には、イギリス人以外のEU加盟国出身の配偶者がいる人もいる。

反対もしかり。イギリスに居住を希望していたEU人、スコットランドに住んでいるけどいつかはイングランドやウェールズに住んでみたいと思っている人たちもいるだろう。

3月29日に「EU離脱の正式通達」をしたばかりのイギリス。さまざまな交渉はこれからだが、今後決められていくことがスコットランドの独立問題やEU再加入の可能性にも絡んでくる。事態はより複雑になる。

例えば「スコットランド、EU再加入の可能性」は、イギリス人の場合、こうも読みとけるのだ。

「今はイングランド側に住んでるけど、今のうちにスコットランドに移住すれば、スコットランド独立時には『スコットランド人』になれる?そしたらまたEU人になれるかもしれないから、EU間の移動の自由はキープできるかも?」

なるほど。そういうこともありえるわけね。

まずはEU離脱の条件がどうなるのか? それによってスコットランドの事情も変わるかもしれない。まだ何も分からない。私は「EU残留」を願っていたけれど、離脱が決まった今、このチョイスが良い方向に行ってほしいと願っている。

「住みたい場所に住める」オプションが広いことで感じる自由― 実現しなくても、自由は持っているだけで意味があると思う。そして1度は持っていた「自由」が手から離れていくとき、人は閉塞感を感じるものだ。

「いつかグラスゴーに住む日があるのかな?」― 正直これはどちらでもいい。

でも数年後「グラスゴーに住む”自由”があるのかな?」― それはまだ分からない。でもそうであってほしいと思っている。

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