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【Brexit日記】諦めない人【EU離脱期限まであと563日】(hanako in London)

*【Brexit日記:英国がEUでなくなる日まで】ロンドン在住ハナコが見つめる「イギリスのEU離脱(Brexit)」。離脱完了までを生活者目線で見つめます。

2017年8月31日

イマココ!」今話題のEU離脱ニュース

2017年8月31日ガーディアン紙:テレサ・メイ英首相は「(Brexit完了後に行われる予定の)2022年の総選挙時も首相として戦う」と語った。

2017年8月9日ガーディアン紙:イングランド銀行、EU離脱に伴い「経済の安定性を管理する能力」にひずみが出る可能性を警告。

今日の政党支持率「明日総選挙が起ったら、どの政党に投票する?」2017年8月21日~8月22日の結果:
保守党41%、労働党42%、自由民主党22%

2017年8月31日BBC:第3回を迎えたイギリスとEU側の代表による離脱交渉は、イギリスが支払う「清算金」をめぐり交渉が難航。ミシェル・バルニエEU首席交渉官は「大きな進展が見られない」と懸念をもらした。

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前回の更新からずいぶんと時間が経ってしまったが、この数カ月、イギリスと日本を眺めて気づいたある共通点について書いてみようと思う。

前回は6月8日に行われたイギリス総選挙の結果について書いたけれど、実はあの記事を書いたときは日本にいた。ごく最近アップした「遠くに暮らす、両親のこと」で少し書いたが、6月~7月、母の肺ガン手術に伴い日本に一時帰国していた。

6月7日にヒースロー発のフライトに乗り、6月8日に羽田着。空港でスマホをネットに繋いでブラウザとTwitterを立上げ、最初に出て来たニュースが「保守党過半数割れ、労働党の躍進」のニュースだった。

ほう、すごい。政治の風向きってこうやって変わるんだ

長旅の後だったのでぐったり疲れていたのだが、このニュースを見て何だか勇気をもらった気がしたのを憶えている。

少し話は遡るが、4月にケン・ローチ監督の映画「わたしは、ダニエル・ブレイク」の小さな上映会に行った。この作品は昨年5月のカンヌ映画祭でパルムドール(最高賞)を受賞。イギリスでは昨年秋に、日本でも今年初旬に公開されている。

イギリス北東部の街ニューカッスルに暮らす、心臓病を患う59歳の男性ダニエルが主人公。療養のために失業保険を受けなければならないものの、制度の壁は厚く彼を苦しめる。そんなとき、2人の子どもを抱えるシングルマザーのケイティに出会い、一家と友情を育んでいく。(詳しいあらすじはコチラから)

ずっと見たいと思っていたのに見逃していたが、私が加入しているメディア・エンタメ系ユニオンが「福利厚生」イベントとしてこの作品の上映会を開催するという。しかも数十人程度の小さな上映会で、何とケン・ローチ監督が上映後のQ&Aにやってくるという!

これは行かねば!

お知らせメールが来てすぐにチケット購入(日本円にして800円ぐらい)。20分程度で完売したようだった。

チケット購入時(3月)はまだ総選挙が発表されていなかったが、その後メイ首相が解散総選挙を宣言。上映会開催時にはもう選挙戦が始まっていた。

ケン・ローチは一貫して労働者階級や移民が直面する現実を描き続けている、名実ともに社会派の監督だ。左派を自称し、労働党を支持していることは知られている。

あたたかなムードのQ&Aではあったが、こういうときに遠慮せずにズバズバ言うのがイギリス人だ。映画について称賛だけでなく、辛辣な意見も寄せられた。しかしローチ監督は柔らかな口調で自分の考えを述べつつ、「どうしたら多くの人たちに寄り添う社会が実現するのか?」「苦悩する人たちに手を差し伸べることができる国になれるのか?」を説き続けた。そして「今こそ国を、制度を変えるチャンスです」「一緒にがんばりましょう」「どうか選挙に行ってください」と優しくも力強く、何度も何度も訴えていた。会場はさながら「和やかだけれど熱い選挙討論会」と化していた。

イギリスを代表する“巨匠”だが、地味で興行的には難しそうな作品を作り続けてきた信念の人だと思う。81歳。まだまだやる気、戦う気でみなぎっていた。

上映会に行ったときは「保守党が圧勝する」と言われ、まだ労働党のコービン党首が叩かれていた時期だった。小さな会で切々と語るローチ監督の「今こそ国を変えるとき!」という言葉に、「巨匠、ちょっと大げさすぎやしませんか?」と正直思った。

「EU離脱はもちろん、ハードブレグジット(強硬なEU離脱)なんて困ってしまう。だからぜひとも労働党に頑張ってほしいけど…でもきっとそんなに大きくなんて変わらないよね」と、心の中でいじわるなつぶやきもしていた。

巨匠、ごめんなさい。最初から諦めていたのは私でした。あのとき、労働党はあんなに劣勢だったけど、あなたは決して諦めていなかった。

空港でスマホのニュースをみながら、あの日のローチ監督の事を思い出して、また嬉しくなった。

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日本帰国中に都議会議員選挙があった。「都民ファースト」が都議会第一党になる結果となったが、私が心震える思いがしたのはもちろんそこではない。

秋葉原で安倍首相が自民推薦候補の応援街頭演説をした日。首相に「NO」を直接言おうと人たちが集まった光景に胸を打たれた。

昨年の安保法案審議中、反対する人たちによる国会前や全国での抗議デモ。今年の共謀罪もしかり。大きな声をあげ、首相に、自民党に、議員たちに反対する意味と意図を伝えようとした人たちがたくさんいた。

首相や議員たちはテレビのニュースから、または国会に通う車の窓越しに抗議の声を聞いたかもしれない。でも市井の人たちが、首相をはじめとするお偉いさんたちの顔を見て「反対」を訴えるチャンスはあまりない。

秋葉原での「安倍やめろ」コールを聞いたとき「ああそうか、街頭演説なら“直接”“顔を見て”声をあげられるんだ」と当たり前のことに気付かされた。

私もあの場に行きたかった…そう思った。

選挙できる年齢になってから、何度か大きく政治の流れが変わった場面を見てきた気がする。でもいろいろあって今の政権に至った。そして安保法案は通り、共謀罪も可決してしまった。

私は安保法案にも共謀罪にも反対だったから「一体誰が、なぜ、賛成するのだろう」という気持ちと共に、「反対する人の意見はなぜこうも届かないのか?」というもどかしい気持ちにもなった。

日本にいないから、日本に流れる「空気感」は分からない。でもネットでニュースを見たり、SNSで人々の反応を拾うと、私と同じ考えの人も相当数いるはずなのに、それが「民意」として取り上げられる気配がまったくなかった。私は本当はものすごい少数派の1人でしかないのだろうか?―そんな風にも感じていた。

ところが…演説の声をかき消すほどの大きなシュプレヒコール。

人々の「反対」の叫びが動きに変わったことを、都議選を通して見ることができた気がする。

===

「EU離脱の不安を抱えている」「社会保障制度に不満がある」と意思表示をしたイギリス人がいたこと。

「今の政権を支持できない」「共謀罪に反対」「憲法改正に反対」と意思表示をした日本人がいたこと。

そして世の中が動いたこと。

2つの選挙を通し、「声をあげ続けたら、世の中が動くこともある」と思えたことは、大きな励ましとなった。

そして、先日Twitterでこのツイードを目にした。

勝つ方法は諦めないこと

力強い言葉で胸に迫る。

ああ、そうか。諦めなければいいんだ!

「Brexit日記」のはずなのに、離脱交渉の進捗とか、イギリスの状況についてあまり書いていないが、「2つの国が揺れるさま」を見ながら同じようなことを思ったこの数カ月だった。

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