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【朝のコーヒー、午後のお茶】「競売ナンバー49の叫び」を再読
私は漫画は何度も読み直すことがあっても、本を再読することはほぼないです。なのですが、たまに、簡単に読み解くことができない本は時間を置いて再びページを開くことがあります。
現代のアメリカ文学を代表する小説家のひとりである、トマス・ピンチョン の全小説が何冊かづつ発売されはじめた当時(2010年)、私は1作品も読んだことがなかったので、文庫本ですでに発売されていた「 競売ナンバー49の叫び 」を手にとってみました。そして、「う〜ん」となってしまったのです。文体や話の流れは好きなのですが、何を暗示しているのか後ろの本編の1/4はあろうかという「解注」を読みながらの読書はスムーズにはいかず、ようやく読み終えたのでした。
先日、時が経って読み直したときに、「探偵小説」の楽しみと、1964年当時のアメリカの状況にも触れる面白さがありました。この時期、コーヒーと共にゆっくり読み解きながらの読書はいかがでしょうか。と以下は簡単なまとめと感想です。
「競売ナンバー49の叫び」 トマス・ピンチョン
ちくま文庫 1966年 900円
次々と現れる情報と共に、謎解きの旅へ
天才の脳内を凡人が旅することができるとすれば、それは本が一番の媒体だろうと思う。難解な作品で知られるトマス・ピンチョン(アメリカ、1937~)の入門作といわれる、作者が28才の時に書かれた中編小説。これが入門だとしたら、他の作品は一体どうなっているのか…。とはいえ、難解が難解を背負っているような作品でないことは確か。主人公の主婦エディパ(容姿についての記述はないが、おそらくかなりの美女)が死んだ元恋人の大富豪によって「遺産管理執行人」に指名されていたことから、謎に包まれた組織の解明に乗り出す。というストーリー。
謎めいた人々や、演劇、ラッパのマークなどに接するうちに、エディパは混乱していく。この示唆や暗号溢れた文字群を、完璧に理解することは難しいけれど、そもそも、情報エントロピーの増大によって(エントロピーについては小説内でも記載されている)無秩序になっていくことが、この小説の軸と考えると、次々に現れる(時にユーモアのある)断片的な情報(シーン)に身を委ねることができる。表現方法がユニークで、言葉の連続性も面白い。そうして読み進めると、時々ハッとするように、情報社会の現実とつながったりもする。「解注」を見つつ、謎解き読書の旅をどうぞ。
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