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201712/7

【Brexit日記】「ちいさいおうち」の行方【EU離脱期限まであと477日】(hanako in London)

*【Brexit日記:英国がEUでなくなる日まで】ロンドン在住ハナコが見つめる「イギリスのEU離脱(Brexit)」。離脱完了までを生活者目線で見つめます。

2017年12月7日

イマココ!」今話題のEU離脱ニュース

2017年12月4日BBCオンライン版: EU離脱交渉が難航。アイルランド国境問題、結論を先送りに。

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あっという間に12月。このペースで月日が過ぎていったらあっという間におばあちゃんになってしまうし、それより前に「あっという間にEU離脱期限が来ちゃうじゃん」と思う今日この頃。離脱交渉が全然進まず、メイ首相も閣僚も保守党も焦っている感じは、クリスマスムード只中のイギリスにもじんわり漂っている。

現在の争点はイギリス・北アイルランドとアイルランド共和国の国境問題(詳しくはコチラ)。

北アイルランドとアイルランドの国境付近は同じEU圏、そして隣接するしている地区なので「北アイルランド側に住む人が、毎日アイルランド国内の職場に通勤している(またはその逆)」なんていうことが日常的に行われている。つまり現在のところ、国は違えど「埼玉から東京に通勤する(またはその逆)」ぐらいの距離感なのだ。

しかしEU離脱後、北アイルランドに「EU圏ルール」が適応されなくなれば、アイルランドで働く北アイルランド住人、北アイルランドでは働くアイルランド住人、どちらも毎日パスポートを携帯して入国審査を受けなくてはならない。就労ビザも必要になるだろうから失業する人も増えるだろう。また国境を越えて病院に通っていた人、学校に通っていた人も同じ環境が守られるとは限らない。様々な面で大きく変化が突き付けられることは必須だ。

隣接地区に暮らす人はこの交渉の行方をかたずをのんで見守っているはず…。不安でたまらない人も多いだろう。

この「アイルランド国境問題」がクリアになった後、離脱交渉は次のステージに進み、さらに多くの人が注目している「イギリスに住むEU人、およびEUに住むイギリス人の居住権についての交渉」がいよいよ始まる。

この↑問題については私の周りにも関係ある人が多い。EU人と結婚し、EUファミリービザ(EU国籍者の家族に発給されるビザ)でイギリスに住んでいる日本人の友人はたくさんいるからだ。

良い意味でも悪い意味でも、EU離脱の影響を受けないイギリス居住者はたぶんいない。物価が高くなる? 経済が悪くなる? 人手不足になる? 治安は? 医療は? 税金は? そしてその結果、どうなる? こういったことはイギリスに住む全員に共通することだ。しかし「全員共通」ではない変化も今後どんどん起こってくる。そして「自分にとってもっとも“悪い意味”でインパクトを受けそうなこと」を真っ先に心配するのが人間の性というもの。

さて前置きが長くなったがワタクシの場合。ワタクシも旦那の人も、何年も前にイギリスで永住権を取得しているため「イギリスに住み続けること」についてはEU 離脱後も“たぶん”問題ないと思われる(とは言え、長い目でみたらどうなるかは誰も分からないのだが)。

しかし不安要素はいくつかある。

その1つは今住んでいる家のことだ。

わたしたちは2年数カ月前、南西ロンドンに小さなフラット(マンション)を購入した。イギリスには貯金をしない代わりに家に投資するカルチャーがある。その背景には「家の値段が下がらない」というイギリスならではの不動産事情がある。持ち家を軸に資産を運用するのが一般的で「家さえ持っていれば安心」という考え方が定着しているのだ。

(この辺のことはコチラに詳しく書きましたので読んでくださると嬉しいです。)

イギリス、特にロンドンは家の値段が高く、為替レートの違いを考えても日本に比べてべらぼうに高い。ロンドンでは1ベッドルームのフラット(=1寝室&1リビングルームの2間マンション)がどんなに安い物件でも3500万円ぐらいはする。

家を買うには頭金をぶち込み、莫大なローンを抱えなくてはならない。しかし高い家賃を払って借家に住むよりも、小さくてもいいから1軒購入したほうが1カ月当たりの出費は減るし、「家の値段は下がらない」から結果的には資産が増える。また家は「買い替え(ちょっとずつ家の大きさとレベルを上げていくために買い替える)」が基本なので「家のローンを完済しなきゃ」というプレッシャーも少ない。「この国にある程度長く住むのなら、家を買わないと」と思う理由はたくさんある。

買ったことへの後悔はないが、当時まさかEU離脱が決定するとは思わなかった。

そしてみんなビックリの離脱決定後、家の値段はじわじわと下がり始めたのである。

ああぁぁぁぁぁ、なんてこと…!(涙)

我が家だけ下がっているわけでなく、国全体の不動産価格が下がっている。だからEU離脱後に買い替えることになったとしても、買い替える先の値段も下がっている。「結局全部が下がるんだから、同じこと」という考え方もある。しかしいくら買い替え先の値段が下がっても、借りているローン額が下がるわけではないので、購入当時の値段よりちょっとだけでも上がっていてくれないと、資産マイナスになってしまうのだから買い替えはできない。

リーマンショックが起こったころ一時バーンと家の値段が下がったが、その後割とあっという間に回復し、昨年までは驚くほどの勢いで上昇、そして「売り手市場」が続いていた。

我が家も購入して1年程度で想定価格が一気に数百万円程度上がってびっくりした。しかし離脱決定後、毎日1000円ぐらいの単位でじわじわじりじり下がり続けている。

これは…何というか…「不安」(涙)。

上昇しすぎる不動産価格を前に「いつか不動産大暴落が来る」と何年も言い続けられていたのにずっと来なかった。

でも今回こそは来るのか?と思ったが、EU離脱決定直後、超高級マンション(10億円レベル)の値段はすぐに下がったものの、一般的な住宅の場合、現在のところ「じわりじわり」としか落ちていない。

なんだか「ずーっとまな板の鯉」な感じというか。

「最低」を記録し続けていた金利が先月(11月)に10年ぶりに上昇したのは大きなニュースだったが、0.25%→0.5%と現在のところはわずかな上昇。こちらも「じわり」の変化。

今後「ドカン」と暴落するのかしないのかは、EU離脱交渉の行方次第なのだと思う。強硬離脱(Hard Brexit)になるか、柔軟離脱(Soft Brexit)、どちらが将来的に吉とでるのかは誰も分からない。しかし現在見る限りは柔軟離脱に進んだほうが、離脱直後のインパクトは少ないことは火を見るより明らかだ。

ロンドンはずっと住宅不足が続いており、EU離脱前にたくさんのフラット(マンション)建設が計画され、現在も工事は続いている。電車に乗って車窓から外を眺めると、工事中の高層マンションがにょきにょきと天を突くように上に伸び続けている。

まだ建ってもいないマンション群も、いつかドッカンと暴落してしまうのか?

家の値段が下がれば「私たちも買える!」と喜ぶ人たちもいるだろう。しかし不動産を軸に構築された経済構造が崩れたら、イギリスは不況になってしまうかもしれない。金利も上がれば、ローンは組みにくなるはずだ。

じわりじわりと不安な毎日。

これまで長~い間働いてきて貯めたお金をすべて頭金にぶち込んだ小さな我が家の行方は? そして暴落したら「ほぼすべて」の資産を失ってしまうわたしたちはどうなる?

そんな胸がチクチクする思いで離脱交渉を見守っている。

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