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映画『なぜ君は総理大臣になれないのか』2020年 大島新監督
元総務大臣政務官で、現在立憲民主党所属の衆議院議員 小川淳也氏を17年追ったドキュメンタリー映画。詳しくは公式サイトをご覧ください。期間限定でオンライン配信していると知って、鑑賞。本編上映後には小川議員と大島監督、二人のゲストを迎えての充実のスぺシャルトークも有り、ドキュメンタリー映画を劇場で観ると高確率でカメラ酔いしてしまう私にはありがたい企画!本日10月2日24 時までチケット購入の上、視聴できます。
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小川さんは、澄んだ湖のようだと思った(名前は小川なんだけど…)。底まで見える透明感で淀んだところがなく、誰かが小石(質問)を投げれば綺麗な波紋が広がるような。政治家の中にはグレーに濁った湖で底に何がいるのかもわからず、投げた小石はただズブズブと飲み込んでしまうような人が多いように思う。トークの中でわかったことだが9月19日時点でご本人は未だにこの映画を観ていないらしい。上映前に(何か映って困ることが映ってないか)一応は確認するのが普通だと思うが。そのくらいやましいことなど一つもないということなのだろう。
小川さんの家族や親戚は、選挙活動を一心に支えながらも、誰も政治家になることを喜んでいない。誰しも、大島監督でさえも「小川さんは政治家に向いていない」と言う。それは権力欲や打算などが無いことが起因しているが、「そんな政治家がいてもいいじゃないか」とも思うし、「いて欲しい」とも思う。政治不信が常態化している中で、小川さんはこれからの世の中に希望をもたらしてくれる政治家かもしれない。現に統計不正の時に「王子」になったのだから。
この映画は小川さん自身のドキュメンタリーというより、小川さんを通して見る選挙映画なのだと思う。何の後ろ盾もなく32歳で超無謀な立候補をした青年がもがき続ける、日本の選挙と選挙にまつわる社会を映しているのだ。私個人としては、もっと小川さんの「人物」を見たかった気持ちもあるが、監督が選挙映画としてシャープに編集した結果、有権者である私たちへの投げかけが、より豪速球になったのだと思う。
そう、この映画で投げかけられていることの一つは「有権者はどうあるべきか」。映画のメインとして、2017年衆議院議員総選挙を追っている。小池百合子が立ち上げた「希望の党」へ合流をめぐって、小川さんは「自分の信念&支援者の想い」と「党内での立場」の板挟みで苦悩する。未来を知っている我々観客は「立憲民主党の方がいいって!」「むしろ無所属の方がいいって!」などと勝手に思ってしまう。小川さんの父親が「とんだ猿芝居だよね」と言うが、その「猿芝居」を長々と映すテレビをはじめとしたメディア。その「派手な芝居」を真に受けた有権者も多かった。政治家の資質や政治理念には目を向けられることなく。もうそろそろ有権者は目を見開かなければ、日本は衰退の一途を辿るだろうと考えさせられる。
自分も含めて、有権者は政治の力を真に信じることから始めなければいけないと思う。政治の力を信じられなければ、政治家を信じられないし、政治家を信じられなければ選挙での1票の力を信じられない。コロナは不幸なことだけれど、コロナで政治が生活に及ぼす影響を如実に表したことで、有権者の意識は変わっていくのかもしれない。「誰が政治家になってもどうせ変わらない」はもう終わりにしてほしい。政権の本質ではなく新首相のパンケーキ好きを映すテレビ番組は終わりにしてほしい。そんなことをこの映画とトークショーを観て思った。
この映画はドキュメンタリーだから、現実にはその先がある。先日小川さんがとある発言でプチ炎上したかと思えば、同じ選挙区の強大なライバル平井卓也デジタル改革担当大臣に「公職選挙法違反」の疑いが報じられている。この先の行方を見守っていきたい。そして、ちょっとだけ妄想してみる。小川さんが総理大臣になって、香川の家賃47,000円/月のアパートから、首相官邸に移るところを。苦しい時も笑って頑張る夫人がファーストレディになるところを。「娘です」のタスキをつけて懸命に選挙活動を手伝う2人の娘が、涙ではなく満面の笑顔になるところを。
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