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20201/3

【映画のはなし】『魂のゆくえ』(2017年) ポール・シュレイダー監督

今年の元旦にやることは結構前から決まっていた。1つは「しんぶん赤旗」の購読を始めること。海外にいるのでデジタル会員。毎朝、コーヒーを飲みながらテレビやオンライン、新聞でニュースを追う時間を持っているが、今年から赤旗もしっかり読み込もうと思っている。

そしてもう1つは、見逃していた映画『魂のゆくえ』を見る事だった。

イーサン・ホーク。一時ちょっと崩れちゃうかな…と思ったこともあったのですが、持ち直した感があります。「渋い素敵なおじさん」になれるか、今後に注目。まだきれいに渋化できるかは判断できない段階ですね。

この映画に興味を持ったのは私がクリスチャンだからというのもあるけれど、公開時にポスターでみた主演のイーサン・ホークの研ぎ澄まされた、でも重い面持ちが気になったからだ。でも実はその後、すっかり忘れていた。

そんなときにSNSである牧師がこの映画についてコメントしており、再び思い出した。「この映画で1年を始めよう」―そう決めて、元旦の晩にやっと視聴した。

まずはじめに映像美に引き込まれた。『シャイニング』のオープニングを思い出す、シンプルなのに重厚感のあるオープニング。ワクワクした。

しばらくすると「これは驚くほど苦くて薄くて、でも骨の髄まで沁みわたるコーヒーみたいな映画だ」と思った。映画を見ながら途中で「コーヒーでも飲まなきゃやってられん」という気持になったのも初めてだった。「やってられん」はつまらないという意味ではない。眉間にしわを寄せつつも、しっかり映画に対峙するための一息が欲しかったのだ。

===

小さな教会で牧師を務めるトラー(イーサン・ホーク)。従軍牧師時代に息子が戦死し、妻も去った。心を閉ざして職務に没頭している。礼拝の後、信徒のメアリー(アマンダ・サイフリット)に「夫と話してほしい」と頼まれる。熱心な環境保護支持者である夫マイケル(フィリップ・エッティンガー)は妻の妊娠を喜べず、彼女に中絶を勧めている。そんなある日、メアリーは自宅ガレージから、夫が自作した「自爆装置」を見つけてしまう。

メアリー役のアマンダ・サイフリット。

個人と組織(教会)、そして社会(環境)の3つの紐がトラーの体を静かにじりじりと締め付けていく姿を描いている作品だ。降りかかる不条理や矛盾、怒りを消化できずに苦悩する姿を見続けるのは苦しいが、その底には見る側に揺るぎない共感を与える。誰だって、生きていれば何かに締め付けられているものだから。そして後半、外部からではなくトラーが自分で自分を追い込んでいくようになると、静かな画面の中に緊張感が一気に張り詰め、見る側に「彼は一体どこに向かう?」「彼の選択を見届けなければ」という強い気持ちが沸き上がる。徹底的に装飾を排したプロダクションデザインも秀逸。色を排除した画面だからこそ、トラーの「苦さ」が際立つのだ。

苦くて薄くてぬるいコーヒー(=映画)を時間を掛けて飲み干すと、そのわずかなぬくもりが小指の先までじわじわと沁みわたった。結末について賛否両論があるのは理解できる作品だが、見終わった後に私の心に浮かんだ言葉は「希望」だった。

今もその希望を噛み締めつつ、温かくて美味しいコーヒーを飲みながらぬるくて苦いコーヒーのことを思い出す。

===

昨年、いろんな意味で社会へ絶望をひどく感じてたが、今年は「希望を探す年」にしたいと思っている。暗くて静かな映画だからこそ私の絶望をそれほど刺激せず、でもその先にある希望を浮かび上がらせてくれたのだろう。

今の私には、ありえないほどぴったりな作品だった。

公式サイトはコチラから。

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