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完璧な一杯より最高の一杯を。映画『珈琲哲学─恋と人生の味わい方─』
コーヒーに関する映画は意外と数があります。ドキュメンタリー映画では『おいしいコーヒーの真実』2008年、『A Film About Coffee』2014年の2作品は生産者の事情とどのようにコーヒーが私たちの元に届くのかを知るのに、とてもいい映画だと思います。
フィクションのコーヒー映画はなかなかセレクトが難しいです。コーヒーが単なるアイテムになっているだけの映画も多い。つまり、コーヒーは「お飾り」であり、そこにあまり意味はないのだと思います。ただ、今回紹介する映画『珈琲哲学─恋と人生の味わい方─』はしっかりコーヒーにフォーカスしながら、登場人物たちのドラマもきちんと描かれています。
そして、なんと言ってもインドネシア映画だということ。実際にコーヒー豆を生産している国だからこその説得力とリアリティを感じられます。また、インドネシアならではの背景(政治・多民族国家)も垣間見えます。サブタイトルに入っている「恋」風味はあんまりしません。恋愛映画ではないので、恋愛映画気分の方は他の映画を観た方がいいかも。
感想をまとめてみましたので、面白そうだと思った方はぜひ映画を観てみてください。
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『珈琲哲學─恋と人生の味わい方─』アンガ・ドゥイマス・サソンコ監督
2015年 インドネシア
原作はディ・レスタリという小説家兼歌手の短編小説。インドネシアジャカルタのカフェの共同経営者である青年のベンとジョディは子供の頃からの友人。亡くなった父親の借金を負っているジョディはなんとかカフェの利益を出そうと必死だが、バリスタのベンは経営には無頓着で、自身のコーヒー道を突きつめることに邁進している。そんなケンカばかりの2人に舞い込んだ一攫千金の賞金のチャンス。それは「完璧な一杯」を作り出すことだった。
店の名前が「珈琲哲学」、おまけに全体的に(インテリアやファッションなど)とてもお洒落で、イケメン2人が主人公ときたもんだ。真面目にお店の経営に苦心するジョディはイケメンメガネ髭男子。破天荒でとにかくコーヒーへのこだわりが強いベンはイケメンロン毛ワイルド男子。一目惚れ必須の美女も加わって…私はなんだかとっても「おあつらえ」映画なんじゃなかろうか。と最初、訝った。けれど、インドネシア映画初視聴ということもあり、興味深く観ていくと、訪れたことのない生のインドネシアの人々や景色、取り巻く雰囲気までもが、コーヒーの湯気とともに映画からたち込めてくるのだった。
ストーリーは過去の自分と父親からの自立がテーマだ。「完璧な一杯」ではなく、「最高の一杯」を求める旅へ。それは「珈琲哲学」ならぬ「人生哲学」へとつながっていく。「これだけ努力しているのに」「なぜ自分が望む方向に邪魔が入るのだ」といった気持ちを常に持ち「完璧」に固執する人生よりも、「あるがままの自分や人生に愛着を持つ」「(自分を含めて)許せない人や事を許す」という経験を経て「最高」を目指す人生。そんなことをコーヒーを通じて教えてくれるような映画。
シャカルタの都市の雰囲気も素敵だが、「最高のコーヒー」を求めて地方のコーヒー農園へ赴く、そこでの田舎の風景と出迎える夫婦は本当に美しい。夫婦の淹れてくれた「最高のコーヒー」はどんな味なんだろうと、想像が膨らむ。「同じコーヒー豆でも淹れる人によって味が変わる。どんな気持ちで淹れてるかによっても味が変わる。」と農園夫が語るセリフが私の内でも反芻される。
余談だけれど、寺沢武一「コブラ」の漫画でコブラが旅を共にする相棒レディに「自分で淹れるコーヒーはまずい」とうセリフがあるが、愛が込められていてとても好きなセリフだ。※コブラとレディの関係性については長くなるので割愛します。(涙なしでは語れない…『COBRA タイム・ドライブ』)
所々ツッコミどころもあるけれど、構えずに観れるインドネシア映画。当然映画を観てるとコーヒーを飲みたくなるので、お手元にご準備を。エンドクレジット後も映像があるので、途中で止めずに最後まで見て欲しい。そして舞台となったカフェ「フィロソフィ・コピ」はジャカルタに実在し、実際に主演のふたりがオーナーをつとめている。(映画.comより)とのこと。これはもうインドネシアに行くしかない!
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