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『TENET テネット』[視聴後逆行からの順行]の方向け ネタバレありのレビュー
クリストファー・ノーラン監督の集大成『TENET テネット』。テネット [順行視聴前]の方向けのレビューでは、少し堅苦しいレビューになってしまったので、こちらでは観賞後の方むけにざっくばらんに書いて行きたいと思います。ネタバレ全開で書きますので鑑賞前の方はくれぐれも読まないようにしてください。
必ずもう一度観たくなる、それが魅惑のノーランワールド
5.0 out of 5.0 starsこの映画は1回観ただけでは理解できないところが最大の魅力なのかもしれない。逆にわからなくて移入できないという欠点でもあるかもしれないが。「1回で完璧に理解したよ」という方もいらっしゃるかと思うが、ほとんどの人がそうではないだろう。そのためにどうしてももう一度観たくなる。しかも劇場で。これはノーラン監督の狙いの1つではなかろうか。結果、リピーターも多く、他に大作の上映がないということもあり、日本でも絶賛大ヒット中だ。でも闇雲に謎ばかりが多くても人はもう一度観たいとは思わないはず。『TENET』は映画の魅力に溢れている。
観たことのないアクション
オスロ空港での見たこともない「順行対逆行」の本人対決。メイキングはまだ見ていないが、大変な撮影だったことは想像できる。カーチェイスはプルトニウム241の奪還だけでも迫力満点な上に、突然のセイター出現+逆走車で度肝を抜かれる。そして、なんと言っても最終決戦の「赤組青組による時間挟撃作戦」。2回観ても、さっぱり時間挟撃の動きがわからない。壊されたビルが一瞬元に戻ってまた壊す理由もわからない。そんな「わからないづくし」のクライマックスなのだが、「わかりやすさ」が普通のエンターテインメント世界で、非常に混乱しながら鑑賞している自分自身を楽しんでいることに気づく。
主人公とニールの時を超えたバディ関係
最終決戦が終わった後のニールとのやり取りで「そうだったのか!」と一挙にことの次第がわかり、その長い時間の挟撃作戦に切なさと悲しさが込み上げてくる。主人公にとっては全てがわかって「友情のはじまり」であるのに対し、ニールにとっては「終わり」。ニールは自分の「終わり」を解っていて最後、部品(?)の一部を主人公に預けたのだろう(泣)。
思わずニールの人生について、そしてニールは何者なのか?いつ逆行してきたのかを考えずにはいられない。そしてまたあの冒頭のオペラ劇場からニールの姿を確認せずにはいられない。
ここからはニールの正体と辿ってきた道筋を私が勝手に推測して想像(妄想)したことを少し書きたい。正解ではないので、参考程度に。
パンフレットで、映画監督の山崎貴さんが「ニールはセイターとキャットの息子マックスなんじゃないかと思っている。」(p22)と述べている。
私は最初、主人公はニールが過去で死ぬと知りながら、マックスを過去の自分の相棒になるよう依頼するだろか?と訝しく思った。だが、セイターが劇中で「息子をもうけたことだけが間違いだった」というようなセリフをわざわざ爆発前に言ったり、ニールがリュックにベトナム(家族で行ったバカンス地)の古い硬貨のお土産のようなストラップをつけていたり、子供の名前は内容に無関係なので、特になくても「あの子」等で事足りるのだが、マックス(正式に書くとMaximilian)という名がついていて、反対からの読みの最初はニール(Maximilian→Nail)になったり。さらに劇中の重要な絵として「ゴヤの絵」を使用していることから、有名なゴヤの『我が子を食らうサトゥルヌス』という作品を想起させる(「自分の子に殺されるという予言」により狂気を抱く)ということなど、深堀していくと、どうにもニール=マックス説が無視できなくなってくる。
もしそうだと仮定したならば、映画当時マックスは10歳ぐらいと仮定して、5年後マックスが育って青年(15歳ぐらい)になる頃、(見た目などから?)マックスがニールだと気づいた主人公がマックスに自分の相棒として、過去に「逆行」してもらうことになる。計10年逆行して、順行に戻ったマックス(ニール)は大学で物理学を勉強するなど、中間点に向け5年間準備を進め、30歳で主人公の相棒として再会する。そうするとちょうど30歳ぐらいになる。現にニール役のロバート・パティンソンは33歳なので、年齢的にはぴったり。さらに、『TENET』は前と後ろの「TEN」が合わさったタイトルなので、ラストの「10分の迎撃作戦」など10という数字が肝になっていることから、14日が中間地点(ニールのセリフ)と考えると、主人公とニールの10年の迎撃作戦と推測される。
主人公にしてみれば「起こったことは変えられない」から、「ニールは死ぬ」と知っていても、マックス(ニール)に過去へ行ってもらわない訳にはいかなかったのだろう。それは、ニールがマックスではない別の人であっても同じだ。それを考えるとどうにも切ない。
ついつい熱くなってしまうが、こんな風に未来の主人公とニールを想像して、いくらでも楽しめるバディ映画の魅力はかなり大きい。
観客の頭の中で映画自体が「逆行」「順行」する
最初に戻るが、やっぱりわからないことが多すぎる。なので、観賞後、観客が映画を観た時に「逆行」して思い出しては考え、また「順行」に戻って映画鑑賞する。という、映画自体がアルゴリズムを持っているように思う。ってだんだん自分でも何を言っているのかわからなくなってきたので、ここは少し冷静になって大まかに映画の流れを図にしてみた。多分間違っているところもあると思うが、先ほどのニール=マックス説(推測)も含めてまとめてみると頭の整理ができてきた。クリックで拡大します。
しかし疑問が残ることはまだまだ多い。黒幕ってどこまでの黒幕なの?どこでいつ味方の部隊は結成されたの?アイヴス(部隊の指揮官)はどこでどう依頼されたの?最初のテスト拷問必要?第三次世界大戦はどういう状況なの?などなど。
集客の様子を見ると、クリストファー・ノーランの作ったアルゴリズムはしばらく私を含めた観客に機能しそうだ。
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最後に『TENET』のタイトルですが、ラテン語の「SATOR式」という縦からも横からも反対からも同じ単語になる、有名な回文「農夫のアレポ氏は馬鋤きを曳いて仕事をする」から来ているようで、劇中に出てくる名前もこの中から採用されていますね。
ホイットマンの詩集『草の葉』から合言葉に使われている
“We live in a twilight world.“ 「黄昏に生きる」
“There are no friends at dusk. “ 「宵に友なし」
という言葉も意味深ですよね。「黄昏」は地球の「黄昏」とか、友というのがニールの事を言っているようにも思えて。
また同じく『草の葉』の有名な名言「わたしにも、誰にも、あなたに代わって道を歩くことはできない。自分の道は自分で行くほかないのだ」も『TENET』の人物達を表しているようにも思います。考え出すとキリがないのでこの辺で終わります。また未来で再会(テネットレビュー再開)するかも!
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