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NHKこもりびと 私の視聴した番組から「ある、ひきこもりの死 扉の向こうの家族」NHKスペシャル
NHKでは「こもりびと」という呼び名で先月から「ひきこもり」関連の番組を放送している。みんながコロナ禍で外出自粛を経験し、あらためて様々な視点で「ひきこもり」を知ろうという試みだ。(NHK#こもりびとページより)
内閣府調査によると、日本は「ひきこもり」=「仕事や学校に行かず、かつ家族以外の人との交流をほとんどせずに、6か月以上続けて自宅にひきこもっている状態」の方が100万人規模になっている。その中でも中高年が61万人。今、8050問題(80代の親が50代の子を支えることから派生する問題)を耳にする機会も多くなってきた。
今回のN H Kの取り組みは一方的ではなく、当事者、家族、支援者、ひきこもりを脱した人々の視点があり、一口に「ひきこもり」といっても、様々なきっかけや状況、問題点や支援のあり方が分かり、私の観た番組はどれもとても興味深い内容だった。私の今回見た番組は次のとおり。NHK+(放送から一週間以内)やNHKオンデマンドで視聴できます。
「見過ごされてきた女性たち ~求められるひきこもり支援~」あさイチ
「ある、ひきこもりの死 扉の向こうの家族」NHKスペシャル
「人を癒やし、人に癒やされる ~ひきこもり支援・石川清~」プロフェッショナル 仕事の流儀
ETV特集「ひきこもり文学」
きょうの健康 “ひきこもり”総力特集
今回はその中でも最も衝撃を受けたドキュメンタリー、「ある、ひきこもりの死 扉の向こうの家族」NHKスペシャルについて感想や感じたことを書きたい。
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「ある、ひきこもりの死 扉の向こうの家族」NHKスペシャル
長期のひきこもりの末に支援を望むことも、受け入れることもできないほどに追い詰められ、亡くなった人たちと家族を取材したこの番組、日曜の夜に放送する内容としてはあまりに重い内容だった。けれどもこれは紛れもなく日本の現実で、見過ごすことはできないことだ。
番組は、自宅で大量のゴミに埋もれて亡くなった牧岡伸一さんの弟、二郎さんへの取材をメインにしていた。亡くなった伸一さんは、初めての仕事で、ノルマを要求される非正規の訪問販売の仕事で売り上げが上がらず、2ヶ月で職場を追われる。その後もなんとか医療事務の正規の仕事に就くも、夜勤などのハードワークで体調を崩してしまう。その後「ひきこもり」となる。遺品整理をする中で垣間見える、資格関連の本からわかる試行錯誤の痕と心情を綴ったノート。以前は兄の状況を「自業自得」と思っていたという弟二郎さんの「(兄は)真剣に悩んで生きていた。(中略)…残念です」という言葉が、自身の後悔を滲ませて悲しく響く。
もがきながら、苦しみながら、どうにかしたいと切望しながら、どうにもならずに親や世間の目は次第に厳しくなっていく。なぜ心身の健康を保ちながら働くことができないのか。なぜつまずいた後に起き上がれない環境なのか。なぜいつでも責任は当事者だけにあると思われるのか。なぜ「助けて」が言えない(言いにくい)社会なのか…。
亡くなった伸一さんの苦しみは伸一さんだけの苦しみではないと思う。今似たような状況にある人も、そうでない人も、誰しも伸一さんになる可能性があるとは考えられないだろうか。コロナという予想外の出来事に、皆が「何が起こるかわからない」を経験し、それでも「自己責任論」を声高に言うのだろうか。
別の取材で、職場の人間関係が原因で20年以上ひきこもってきた男性の言葉「生きることが怖いじゃなく、生きていくことが怖くなってしまった」も印象に残った。時間の持つ残酷さや恐怖が垣間見えるように思った。先のことを思った時、未来という魔物が襲ってくるように感じるのではないだろうか。そのことは私も、とても他人事とは思えない。
胸が押しつぶされるような気持ちで観た番組の最後は、ナレーションで「生きてるだけでいいんですよ」で締め括られた。私にはその言葉がとても虚しく感じられた。それを育む豊かな大地(社会)がなければ、根付かない言葉だと思ったからだ。「生きてるだけ」があまりに苦しくて亡くなったのではないだろうか。
私が好きなCreepy Nutsの曲「オトナ」に「俺達はただ普通に息を吸って吐くだけが何故難しいんでしょうか?」という歌詞がある。決して他人事と思わず、苦しみの中にある人への想像力を持って、誰もが少なからず感じている「生きてるだけの」難しさがどこにあるのかを考え、「生きやすく」改善していくこと。それが社会全体の課題なのだと番組を通して思った。
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