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20197/5

【移民として生きるロンドン】選挙ができない by Hanako in London

※英国で永住権を取得して早13年。自分が移民であると感じつつ、ロンドンで暮らしている。ガイコクジンとして生活することで見えること、見えないこと、分かること、分からないこと。

ワタクシ、選挙が好きなんです。子どもの時から。

思い出すとかなり変な子だったと思う。親の投票に必ずついていき、その後夜を徹して選挙速報。小学生の頃も、結構深夜までワクワクしながら速報を見ていた。両親もこの日ばかりは「早く寝なさい」とあまり言わなかった。たぶん自分たちも遅くまで見ていたかったからだと思う。

選挙ポスターとかチラシを見るのも好きで、選挙カーから聞こえる「清き一票を!」的ウグイスの真似事とかして友だちを笑わせたりもしていた。

両親は毎回絶対選挙に行く人たちだった。だから私もそんなものだと思って大人になり、選挙を「見る」のが好きな子どもから、選挙を「する」のも好きな大人になった。

日本は昨日、参議院選が公示されましたね。在外選挙登録をしているので、ワタクシももちろん投票します。

党首討論などがYoutubeにアップされるようになり、海外からも選挙に向けての勉強&情報収集が簡単になりました。有難いです。

6月26日に在英日本大使館から「第25回参議院議員通常選挙に伴う在外投票の実施について」というタイトルのメールが届いた。一部抜粋すると、

在英国日本国大使館の投票期間は,7月5日~7月14日(予定)です。
投票時間:午前9時30分から午後5時まで(予定)
投票場所:在英国日本国大使館

とのこと。平日は午後5時までということなので(早い…)、会社員の旦那のヒトと2人で投票に行けるのは2週末のみ。現在のところ、今週日曜に投票に行く予定にしている。

選挙は「フツーの市民」が直接政治参加できる貴重な機会。1票だって無駄にできないので毎回真剣に考えて投票している。日本にいないので日本に立ち込める空気感までは理解できていないと思うけれど、文明の利器「ネット」を駆使して情報を集め、どこに、誰に、投票すべきかここ数日必死に考えている。

さて、

そんな選挙好きなワタクシですが、国籍は日本なのでイギリスの選挙には投票できない。仕方がないと思いつつも毎回「悲しい…」と感じている。長く住んでいて永住権も取得しているけれど、国民ではないとはこういうことなんだなあと思ったりもする。

総選挙や地方選、そして2016年のEU離脱の是非を問う国民投票等、実際の選挙時にもニュースを見ながら「選挙できたらな…」と思うけれど、それよりももっと心に刺さるのは、地方自治体から郵送で届く「選挙人登録用フォーム」を受け取るときだ。

この選挙人登録 フォーム 、今のところ毎回郵送できている。毎年ではないものの、2年に1度ぐらいの割合で送られてくる。個人宛ではなく、一軒に1通届くのが特徴。同じ家に住んでいる16歳以上の人の個人情報を書き込むものだ。

住人が家族であるかどうかは関係なく(なので同居人の関係性については書く欄がない)、16歳以上の住人全員の姓名、国籍(電話とメルアドは記載してもしなくてもいい)を記入する。選挙権があるのは誰で、選挙権がないのは誰なのかのかを、同じ住所に帰属する「家単位」で登録するのである。

2016年に我が家が受け取った紙の登録フォーム。オンラインでも申請可能なことが分かったので、書きかけた残骸です。「Japanese」と書いたのは私の手書き。氏名、国籍が必須項目で、電話番号とメルアドは書いても書かなくても良い。

②の箇所は、この家に誰も選挙権を有する人が居住していない場合のが説明を書くところ。「空き家だから」「選挙できない国籍の住人しかいない」等の項目に印をつけます。③は「嘘書いてません」の宣言とサインをする項目。

登録はこの紙のフォームに書き込んで郵送する方法(紙での登録)でもよいし、オンラインで登録してもOK。この選挙人登録をしていないと、イギリス人であっても選挙権がないことに。それぐらい大事な登録なのだ。

こちらは私が暮らす地方自治体サイトの選挙人登録ページをキャプチャしたもの。このように地方自治体にも窓口を設けているものの、サイトをクリックすると政府管轄サイトに行くので、とりまとめは国がやっている模様。

このフォームが届くたびに「ああ、私はこの国で選挙できないだなあ…」としみじみ思う。そして「何とか永住権保持者でも選挙できるようにならないだろうか?」とつぶやく。 きっと日本にいる永住者も選挙の度に同じ思いをしているのではないかな…。

イギリスの選挙と日本の選挙と異なる点は多々あるが、その中の1つが

「非イギリス人でも選挙ができる人がいる」

こと。これはイギリスが歩んできた歴史を物語るものので、なかなか興味深い。以下にイギリスで行われる各選挙の選挙権保有資格を簡単にまとめてみる。

※下記「市民権」と表記しているのは、英語のCitizenshipの略だからです。ここでの「市民権」の意味は基本的には「国籍」と同義語です。

以下、イギリス政府サイトを参照しました。

●総選挙(国政):
– 選挙人登録をしている
– 投票日に18歳以上である
– イギリス、アイルランド、またはイギリス連邦国の市民権保持者
_イギリス居住者(または過去15年以内に選挙人登録を行った海外在住のイギリス市民権保持者)
– 法的に選挙権をはく奪されていない

上記資格を見ると、アイルランド人とイギリス連邦国の人はイギリス人とほぼ同等の選挙権を持つことが分かる。これが基本形だが、下記3選挙の選挙権保有資格も各々少しずつ違いがある。(違う箇所は太字にしました)

地方選挙:
– 選挙人登録をしている
– 投票日に18歳以上である(スコットランドでは16歳以上
– イギリス、アイルランド、イギリス連邦国、またはEU加盟国の市民権保持者
– 選挙区内に居住している
– 法的に選挙権をはく奪されていない

地方選挙は、選挙区に居住していることが必須。在外選挙はなし。

欧州議会選挙:(イギリス選挙区で投票する場合)
– 選挙人登録をしている
– 投票日に18歳以上である
– イギリス、イギリス連邦国、またはEU加盟国の市民権保持者
– イギリス居住者 (または過去15年以内に選挙人登録を行った海外在住のイギリス市民権保持者)
– 法的に選挙権をはく奪されていない

欧州議会選挙はEU加盟国すべてで投票が行われるものの、イギリスに居住し、イギリスで選挙人登録をしているEU人の場合、

アイルランド、マルタ、キプロス出身者:イギリスで投票
それ以外のEU国出身者:イギリスまたは母国、どちらで選挙するかを選択できる

という違いがある。なかなかフクザツ…。

●国民投票:
– 選挙人登録をしている
– 投票日に18歳以上である
– イギリス、イギリス連邦国、またはEU加盟国の市民権保持者
– イギリスおよびジブラルタル居住者 (または過去15年以内に選挙人登録を行った海外在住のイギリス市民権保持者)
– 法的に選挙権をはく奪されていない

国民投票にはジブラルタル居住者にも選挙権があることが、他の選挙との大きな違いのようです。

今回調べるまで、私は2016年の国民投票はイギリス人とアイルランド人だけができたのだと思っていたのだが、イギリス連邦国出身者、例えばオーストラリア人、ニュージーランド人にも投票できたのだと知った(無知でした…)。イギリスにで生活していると、アイルランドはもちろん、EU諸国およびイギリス連邦国との近さを強く感じるけれど、それは選挙にも表れているとは少し驚きだった。

私はもうイギリスで永住権を取得してから10年以上も経過しており、手続きを踏めばたぶんイギリス国籍も取得可能だと思う。でも今のところ取得する気持ちはない。日本国籍を失効したくないし、現在イギリスに居住し、差別のようなものは時々感じることがあるのの、国籍がないことで不便はほぼないので、取得の必要性を感じていないからだ。

しかし選挙ができないのは…残念だなあと毎回しつこく感じている。

イギリスの開票結果のアナウンス風景。候補者が前に並んだ中、票数が発表される。ちょっと残酷な風景です。

イギリス人と同じように税金を払っているし、同じ福祉を受けることもできる。でも政治参加は「ダメ」と言われる感覚は大変苦い。「だって国籍違うでしょ?」といえばそれまでだが、この国に暮らしているのだからイギリスのことを考えて何かアクションしたいという気持ちになる。その「何かしたい」の大きな手段である選挙ができないことは本当に残念なのだ。

現在ブレグジットに揺れるイギリス。反移民的考え方がブレグジットへの大きな弾みになったので、こうした選挙権にまつわる法律が簡単に変わったりはしないだろう。

しかしイギリスは人権を大事にしている国であるとも感じている。

一部の選挙(例えば地方選とか)から可能になるような動きがあったらなあと、選挙人登録フォームを見るたび、繰り返し思っている。

選挙は世の中を光ある方へ導くための手段だと信じている。いつかその機会が、ガイジン(移民)の私にもあることを願っている。

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