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20197/21

【移民として生きるロンドン】遺言書を作ってみようかと①「きっかけは“女王様”」 by hanako in London

※英国で永住権を取得して早13年。自分が移民であると感じつつ、ロンドンで暮らしている。ガイコクジンとして生活しているので、分からないことが多すぎる。調べながら生きてます。

遺言書」と書くと、何だかドキッとする。別にすぐに死んでしまう予定はワタクシにも旦那のヒトにもないのだけれど、 実は遺言書作成はここ数年の懸案だった。

イギリスでは家を買うとときに担当する事務弁護士(Solicitor)から必ず遺言書(英語では「Will」。「意思」と同じ言葉)を作ることを強く勧められる。

そもそも遺言書は遺産を故人の意図通りにしかるべきところに移行させるためののも。その作業が遺言書があることでスムーズになる。

「家を買う=資産を手にする」ことだから、家を買ったタイミングで遺言書を作成することは理にかなっているし、資産状況がよく分かった事務弁護士が目の前にいる段階で作成すれば説明も少なくて済むというもの。

そこで即作る人もいるのだと思うけれど、それなりのコストが掛かるので「考えておきます」と見送る人も多いよう。私の身近にいる同世代の知人で遺言書を作った人はまだいない。

そんな 私たちが重い腰をあげて「遺言書、作ろうか」と思ったのは、すでに遺言書を作成している年上の知人から

「遺言書作っておかないと、資産が女王様に行っちゃうよ」

と言われたからだ。

「女王様」と言うのは、イギリス的な表現で「国(イギリス)」を指している(なので、私たちが死んでも資産がエリザベス女王やその家族に直接行くわけではありません)。つまり、遺言書がないと法定相続人であっても一度国の管轄となり、その後申請しないと相続できないというのだ。

おお、これは大変めんどくさそう。

イギリスで散々「何かを申請する」「交渉する」難しさを経験している。今日交通事故で死んでしまうかもしれないし、 死はいつ訪れるのか誰にも分からない。

ちょっとの努力で先の面倒を回避できるのなら、やっておいた方がいいに決まっている。

■在英、既婚、子なし、家族は日本:ワタクシたちのケース

我が家に大した資産なんでもちろんない。かなりの部分がまだまだ銀行のモノである小さなフラット(マンション)の1室と、小さく貯めているなけなしのキャッシュがほんのちょろっとあるのみ。

自宅の居間より。この家での暮らしも4年。あっという間でした。

でも、小さいとは言え不動産を持ってしまったので、私たちが明日死んでも家は確実に残る。だから相続のことは考えないとならないことなのだ。

良く分からないなりに遺言書について考え始めた私たちが、片方、もしくは両方が死亡した場合に希望することは下記2点。

① どちらか片方が先に死んだ場合、残った方に問題なく資産が移行する
② 両方一緒に死亡した場合、国の管轄になることなく、すみやかに資産が日本の親族のもとに届けたい

ちょっと解説します。

①については、上記に書いたように片方の死に際し、悲しみに暮れているであろう私もしくは旦那のヒトが「頑張るべきこと」を1つでも減したい、という願い。

悲しくてヘロヘロになっているときに、お金を取り返すことに頑張るのはつらすぎる。遺言書があれば、アクションする際も最低限の手間で済む。

とはいえ、2人のどちらかが生きていれば、1度国に差し押さえられたとしても何とか取り返す術はたぶんある。しかし、例えば交通事故等で2人同時に死んでしまった場合(②のケース)の方がややこしそうだ

なけなしの資産とは言え一応頑張って働いて積み上げてきたものを自動的に国に召し上げられてもなあ…と思う。税金はちゃんと払っているから、最後の意思として自己資産ぐらいは適切なところに届けたい。

しかし私たちの場合、子供ナシ&親族はすべて日本。ロンドンのちっこい我が家を日本の兄妹、甥姪がこのままの状態で相続したいとも思えない。ちゃんとキャッシュ化して、送り届けることって可能なのかしら?

結構ハードルが高そう…

等々、いろいろと分からないことが多いものの、ひとまずは遺言書を作る事は決め、調べ始めた。

■誰に遺言書を作ってもらう?

まずはどこで、誰に遺言書作成を委託するか?のリサーチから始めた。

遺言書を作ろうと思った人は、「コストを抑えたい」という観点からまずは「自分で作れないものなのか?」と考える人は多いと思う。

実はイギリスの文房具には遺言書の白紙フォームが販売されているのは結構有名な話。私もこれについては前から知っていた。

検索するだけでオンラインで購入可能なフォームがいろいろ出てきます。

しかし1か所でも記入間違いや不備があると、遺言書としての法的効力を失ってしまう

法律についてな~んにも知らない上に、ガイジンだし、英語がネイティブでもない私たち。「母国語でない言葉で法的書類を確実に正しく作成する」のは無理難題。ここでお金をケチって、積年の努力をパァになるようなリスクはもちろん犯せないので、「自分たちで作成する」案は最初から却下

一般的に遺言書は事務弁護士に依頼して作るものとされている。しかしそれだけがオプションなのだろうか? そんな基本情報を探していた時に、役に立ったのが 「Money Saving Expert」というウェブサイト だ。

お金にまつわるオファーや節約術などを指南している人気サイトで、投資系に明るい友人に勧められたのをきっかけに時々読んでいた。この記事では安く遺言書を作る方法を解説しているが、これを読んで初めて、ほとんどの作業をオンラインで行う遺言書作成方法があることを知った。

これはオンラインベースのリーガルサービス会社が提供しているサービスで、専門家の確認作業も含まれているので安心…そう(に見える)。

これは…使えるかもしれない。

そこでまず値段とプロセスを比較した。我が家の家購入(いろいろ悲惨な購入劇のまとめはコチラから)の際に依頼した事務弁護士に見積もりをしてもらうと、

「複雑でなく(具体的には信託について盛り込まない)シンプルな遺言書作成であれば、夫婦2人用のもので495ポンド+消費税20%=594ポンド。加え、保管料は毎年別途かかる」

という回答。また電話での応対は不可で、1度事務弁護士事務所に会いに行かなくてはならない。

円高の現在のレート(1ポンド=約135円)で計算して、8万円ちょっと。しかし1ポンドはイギリス的には100円ぐらいの感覚で使用されるので、まあ、仕方がないコストかもしれない。

次にオンラインでのリーガルサービス会社による遺言書作成の値段を調べた。会社によって内容に若干違いがありコストもさまざまだが、事務弁護士版と比較し半額前後のコストで作成できる様子。

こちらは<https://wills.which.co.uk>の概算見積もりキャプチャ画面。同じ遺言書作成でも、どこまでのサービスを提供するかで値段が違うので要注意。

作成にまつわるプロセスを比較して気になったのは、事務弁護士の場合は面談が対面で行われるが、オンラインベースの場合は電話で行われる点(注:電話面談がないサービスもある)。実際に面談できる方が分からないことを直接聞けるというのは、事務弁護士で作成するメリットだ。しかし調べた限りでは他の点においては両者あまり変わらない様子。また、オンラインベースの場合、電話面接をして作成に合意して初めて支払いが発生する会社もある。

ひとまずオンラインベースの方を試してみて「これはウチには合わない」と思ったらそこでキャンセルし、事務弁護士の元で作る――という方針でやってみることにした。

こんな風にして手探りで遺言書作成手続きを始めることにした私たち。次回はオンラインベースでの遺言書作成について、具体的にリサーチします(続く)。

続き→遺言書を作ってみようかと② 「遺言書をネットで作る」by hanako in London

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