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【イギリス風刺漫画を読んでみる】プラマー(設備屋さん)との会話
イギリスの風刺漫画をコツコツ読み解きます。
長らくガイジンとしてイギリスに長く暮らしているが、いまだに苦労しているのはジョークを理解すること。
ウィットに富んだ会話をいかにさりげなく言えるかに頑張るイギリス人は多い。こちらを楽しませようと頑張っているのは分かるけれど、頑張ってくれるとそれだけ私には何を言っているのかわからないので毎度困っている。飲み会や食事の場で、分かったふりして苦笑いすることはしばしば。
「フリして笑ってる」時間はそこそこのゴーモンである。
しかも我が家は日本人2人家族なので、耳元で意味を解説してくれるネイティブスピーカーもいない。
会話も難しいが、新聞や雑誌などの記事の「機転の利いた引用」や「オチ」も本当に難しい。何度も読み直して、じーっと考え、やっと「…こういう意味なのかも!?」にたどり着けることもあるけれど、いくら考えてもまったく分からないまま古新聞古雑誌になることも多い。
文字情報の記事も難しいが、風刺漫画も難しい。絵は分かる。だって絵だから。でも風刺なので、背景も分からないとオチも意味も理解できない。最近のニュースの風刺ならまだしも、歴史的事実や昔からある風習を下敷きにしている場合も多いし、そこにイギリスらしいニヒルで意地悪なひねりも入っているのだからガイジンには難解だ。
でも風刺漫画の絵には味があるものが多いのだ。チラッと見るだけでは意味が分からないものが多いのに、どうしても素通りできない。何とか分かりたいと思って格闘している。
その辺の事情はコチラ↓に書きました。
そんな、私を悩ませ続けているのにどうにも抗えない魅力を持つ風刺漫画。何とか解読したいと思い、主にTwitterにアップされている風刺漫画を拾ってコツコツ書いていこうと思います。お付き合いくださったら嬉しいです。
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今回はコチラ。プラマー(設備屋さん)と女性が会話している漫画だ。
“Is it really necessary to use such dreadful expressions whilst you work?” “No, Mum, it ain’t exactly necessary, but the quality of the work will suffer if we don’t.”
1921年、ジョージ・ベルチャー作(たぶんPunch Magazineに掲載)。
「そんなに汚い言葉を使わないと、作業できないのですか?」
「奥様、そんなこたぁねぇですが、その方がイイ仕事できますんで」
水回りやガス周りのエンジニアをイギリスでは「プラマー(Plumber)」と言う。日本でいう「設備屋さん」だ。
古い家が多いイギリス。家を修理することが多く、プラマーとビルダー(大工さん)にお世話になる機会はとても多い。近所に腕の良いプラマーやビルダーがいると本当にラッキー。この手の情報は口コミが多く(プラマー&ビルダーはあまりウェブサイトを持っていない)、お金を出しても欲しい情報である。
この漫画はプラマーが床板を外して何らか修理をしており、その脇に夫婦とおぼしき男女が立っている絵だ。この夫妻の家の床下を通るパイプに何らか問題あり、修理中なのだろう。作業中のプラマーの言葉の汚さに助成がうんざりした、苦言を言っている。
この漫画、1921年に描かれたのでちょうど100年前。正直100年前とは思えないぐらい、状況は今もほとんど変わっていない。現在も言葉遣いが荒っぽいプラマーさんは多いのだ。
現代の人がこの漫画を見たら、①純粋に漫画の内容にププッとし、②100年前とは思えぬ内容にびっくりするので、2度楽しい。
我が家も水漏れを数回経験しているので、何度もプラマーにお世話になっている。プラマーと一口に言っても、タイプはいろいろだ。中には「お坊ちゃまくん」みたいな品の良い青年もいたのだが、真冬でも薄着&お尻が見えそうなぐらいずり下がったズボン姿でやってきて、この漫画のようにちょっと荒っぽい言葉を話すプラマーが多かった。
気の良い人もいたし、機嫌を損ねたらもうそれで帰ってしまいそうな人もいて毎度ヒヤヒヤしている。
言葉が荒っぽければそれだけ、私のようなガイジンには何を言ってるのか分からない事も多い。
先日来たプラマーさんは、この漫画とほぼ同じような“dreadful expressions(汚い言葉/ひどい言い回し)”のオンパレードだった。我が家にはパーキングがないので、プラマーさんはなかなか駐車が出来なかった。何度も電話がかかってきて「一体どこに駐車したらいいんだよ!」と聞かれ、丁寧に答えているつもりなのだが、向こうには私の英語が通じないらしい。
最後はガチャ切り。修理する前に帰られてしまうんじゃないかと思ったぐらいだ。
でもちゃんと仕事はしてくれて、水漏れはすぐに解消した。作業の間中「そもそもこの配管した奴の仕事が“Fxxking terrible(クソ最低だよ!)”」とFワードを連発して毒づいていたが、次回同じことがあったときのコツも、(これまたFワード連発で)いろいろ教えてくれた。
コロナ禍なのでお茶を出せなかったから、帰り際にチョコレートを1箱渡した。するとニッコリ笑ってくれた。
↑この日は11月とは思えぬコート必須の寒さの日だったのですが、プラマーさんはフリース&Tシャツの薄着でした。お尻は見えなかったけど(ε-(´∀`*)ホッ)
なかなかプラマーとの付き合い方がうまくできない私。この漫画の女性のようにプラマーに苦言を吐くなんて到底できない。
しかしプラマーは100年前も今もあまり変わらないのだから、私の方が扱い方を体得し、変わらないと。
でももうちょっと修行が必要かな…。
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日々変わっていくイギリスもあるが、全然変わらぬイギリスもある。風刺漫画にはその両方が詰まっているので面白い。
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