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【今日の云々】芸術家とエゴ by hanako in London
ロンドンのDesign Museumで開催中の「スタンリー・キューブリック展」に先日行ってきた。Design Museumの今年の目玉展覧会として宣伝しているが、そのとおり、かなり見ごたえのある展覧会だった。
私物や所蔵品に加え、代表作がコーナーに分かれて展示されている。作品の映像がふんだんに使われているのも満足感を誘った。展示を見ながら「わたし、案外キューブリック作品たくさん見てたんだなあ」と驚いた。全然知らない作品は1つもなく、ほとんどが鑑賞済だった。
私にとってのキューブリック作品ナンバー1はダントツで『シャイニング』。今でも何か「怖いよ~」と思うことがあると、この映画を思い出す。半分トラウマ。でもそれぐらい美しく、恐ろしく、センセーショナルな映像だった。
傑作だし好きなのだけれど、私の人生を変えてくれはしなかった作品は 『2001年宇宙の旅』、 『ロリータ』、そして『時計じかけのオレンジ』。
細部を忘れてしまったけれど、観た時にかなり衝撃を受けたので今回を機に再鑑賞したいと思ったのは『フルメタル・ジャケット』。
見なくっても良かったなあと改めて思ったのは『アイズ・ワイド・シャット』。これはもう見なくっていいや(笑)。
実はキューブリック作品だと知らず、大昔にぼやっと見てしまった『バリー・リンドン』というのもある。絶対見たはずなのに本当にぼやっと見たので、内容を何も覚えていない。
もう一度見直したい作品が多く、また見た当時のことも思い出したりもした。ワクワクしたり、ちょっと胸がヒリヒリしたりと、展示を回りながらなんだか心が忙しかった。

さて。
展覧会を満喫し、キューブリックの圧倒的な才能を思い知ったのだけれども、天才ゆえのエピソードが多々ある人だったことは有名で、展示からもそのことが垣間見えた。『フルメタル・ジャケット』の撮影風景の映像を見たのだが、出演者に対する振る舞いを見る限り、かなりおっかない、大変そうな御仁である。低次元な感想かもだが「こういう上司がいたら、本気でやだな」と思った。振る舞いや口調が、とても怖かった。
彼の「こだわり」の部分にも思うところがあった。キューブリックはアメリカ人だが、1961年からはイギリスに暮らし、ほとんどの作品をロンドン近郊で撮影した。ヴェトナムの戦場も、ニューヨークの街角も、全部ロンドンで再現したというのだから…大変だ。周囲の人たちの苦労は底知れぬ大変さだったと思う。
キューブリックを個人的に知らないので、彼がどんな性格の人だったのかは不明だ。
ただ展示を見ながら、以前あるアーティストが言っていた言葉を思い出したのだ。
「アートのため、良い作品を作るためだったら、人に❝多少”迷惑をかけてもワガママを言ってもいいと思う。だってそれがアートのためだから」
う~む。
そうなんだろうか?
この言葉を聞いたとき、「そうだよね、その通りだよね」と全然思えなかったが、「う~ん、う~ん」と唸るだけでお茶を濁してしまったチキンなワタクシである。
以来、圧倒的な芸術に触れるたびにこの言葉を思い出し、グルグル問答をしてしまう。
たぶん「“多少”の迷惑」の “多少” がどれぐらいなのか?にもよるのだろう。「美しいものを作れたら、(限度はあるものの)ある程度のことは許される」というような、私にとっては「傲慢に聞こえる想い」が背景にあるか、ないかの差なのかもしれない。

エゴがなければ芸術は生まれなのかもしれない。しかし「こだわりを通すこと」と「傲慢さ」は別のものだと思う。天才には天才の苦悩があるのだろうし、また芸術を生み出すには「産みの苦しみ」があるだろう。でもそのことと傲慢さは別次元のことだし、個性的であることと不遜な態度はまったくリンクしないはずだ。
これまでに仕事でも仕事以外でも才能のある面々にたくさん会ってきて、いろんな態度を見たし、いろんな態度を取られてきた。ビックリするほど楽しい思いもしたけれど、生涯忘れられないぐらい嫌な思いもたくさんした。
嫌だなあと思った後、「でもすごい人だから、しょうがないよね」「作品は素晴らしいから、(どんな態度を取られても)また作品は見たいな」なんてことはもちろん思わなかった。そう思うほど、私は人間ができてないし腹も座っていない。芸術には触れていたいと思うのだけど、芸術の影に傲慢さとのリンクを感じた場合、私はそういったものからただただ遠くにいたいようなのだ。
繰り返しになるけれど、キューブリック様がどんな人だったか、全く知らない。上記はキューブリック展を見ながら、私が思い出したり思ったことであって、 巨匠様のことを言っているわけではない。この点、どうか誤解なきようお願いします。
すごく良い展示だったので、ちょっと深みに入った「グルグル問答」を始めるに至ったのだ。それだけ、興味深く、濃く、楽しい展示だった。
Stanley Kubrick: The Exhibition at Design Museum
※写真は、同展覧会のプレス用内覧会(撮影可能)にて、著者が撮影。

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