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20197/31

【移民として生きるロンドン】遺言書を作ってみようかと② 「遺言書をネットで作る」by hanako in London

※英国で永住権を取得して早13年。自分が移民であると感じつつ、ロンドンで暮らしている。ガイコクジンとして生活しているので、分からないことが多すぎる。調べながら生きてます。

<前回の内容>
「遺言書を作ろう」と決意した、イギリス在住の日本人夫婦のワタクシたち。事務弁護士に依頼して作成する方法とオンラインベースのリーガルサービス会社(以下、OLSと略称で書きます)での作成とをざっくりと比較し、ひとまず後者の方法で作成してみることに。 参照:「遺言書を作ってみようかと①」

■各社サービス内容を調べてみる

たくさんあるOSLの中から、一体どの遺言作成サービスを利用したらよいのだろうか? ネット検索を繰り返し、<Money Saving Expert>に紹介していた数社以外もリサーチしてみたところ、各社ごとのサービス内容の違いが分かってきた。

どの遺言作成サービスでも共通して行うことは:

●オンライン申し込みしたことを元にテンプレートに沿って遺言書を作成
●法律のプロが確認して完成
●遺言書の保管

各サービスによって異なる点は:

●作成料金
●1人用のシンプルな遺言書を専門とするが、2人用(同じ内容x2=ミラーリングと言う)は得意としないOLSもある。
●リーガルチームによる電話面談の有無
●遺言書保管料がワンオフ(1回の支払いで永年保管)か、毎年更新か?

等々(他にもサービスごとに相違点は多々ある)。

基本オンラインでの作成は顔が見えない状態で行うもの。私たちのようなイギリスにおける「普通の遺言書の作成方法」について何も知らない人にとっては、少しでも分かりやすく、また分からないことを質問できるサービスを選びたい。

■Co-opリーガルサービスに決めた理由

そんな思いで数社のサービスを比較・検討したうえで、私たちはThe Co-operative Group(イギリス・生活協同組合、略称Co-op)のリーガルサービス部門で作成することにした

Co-op リーガルサービスのウェブサイトのキャプチャー画面。
出典:
https://www.co-oplegalservices.co.uk/making-a-will/

Co-opを選んだ理由は、

①私たちは夫婦で同一内容の遺言書作成を希望しているので、ジョイント・ウィル(またはミラー・ウィル)の作成可能。
②リーガルチームとの電話面談があり、そこで分からないことや盛り込みたいリクエストについて相談できる。
③遺言書の永年保管料が料金に含まれている。
⓸ The Co-operative Group は食品から銀行、葬儀サービス部門まで幅広く扱っている。リーガルサービス部門が今後消滅する確率は低そう。
⑤ 他社に比べてやや割高であり2人用で定価234ポンド(税込み、現在のレート※で約3万1500円)だが、<Money Saving Expert> 経由で申し込むと185ポンド(約2万5000円)になる。
⑤ 2人同時に亡くなった場合、Co-opリーガルチームを遺言執行人&受託人に指名できる。

上記5点から。

②の電話面談があることは大きな安心感につながった。いろいろわからないことを直接口頭で聞けたらありがたい。

値段に関しては、他のサービスでは③遺言書保管料が年間安くても10ポンド程度かかる。作成費用がやや割高でも、永年保管料が料金に含まれているCo-opの方がトータルコストは安くなると考えた。

また永年保管なので更新の手間がかからないのも良い点だと思った。何らかの理由で更新を見過ごしてしまうと、それまでかけてきた手間とコストが全部パーになる可能性もあるので、そういったリスクは避けたかった。

しかし何よりCo-opに決めた最大の理由は⑤の

2人同時に亡くなった場合、Co-opリーガルチームを遺言執行人&受託人に指名できる

ことだった。

この点について少し解説します。

私たちの場合、夫婦どちらか1人がなくなったときは、生き残ったもう1人に全遺産が行くことになる。つまり生き残った方が遺言執行人(Executor)および 受託者(Trustee) となり、必要な手続きをした後に遺産の受益者(Beneficiary)にもなる。この場合はシンプルだ。

※用語の整理
委託者:遺産を残す人。つまり今回の場合は遺言書を作成する私と旦那のヒト。
遺言執行人:遺言執行手続きを担当する人。具体的には相続財産目録を作成したり、各金融機関での預金解約手続き、不動産名義変更手続き等の手続きを遂行する人。
受託者:委託者が残した財産を管理・運用する人。財産の処理の仕方に決定権を持つ人。
受益者:受託者の管理・運用によって生み出された利益をもらえる人。

しかし問題なのは、不慮の事故(?)で2人一緒に死んでしまった場合だ。

私たちのなけなしのお金は、日本にいるワタクシと旦那のヒトの家族に届けたい。しかし日本へ届けるためには、ロンドンにある私たちの家を処分して現金化し、イギリスの銀行口座を片付けた上で日本に送金する「諸々やってくれる人=遺言執行人&受託者」を別に指名しておく必要がある。

この役目はなかなか大変そうなので、どうしたものかと思っていた。Co-opリーガルチームの解説を読みこむまでは、

  1. とにかく何でもやってくれる人として私の兄(←英語ができて海外経験があるので、ワタクシと旦那のヒトのファミリーメンバーの中では最も適任…な気がする)を指名する。
  2. 兄が日本にいるイギリスの事務弁護士資格保有者の人(調べると結構います)にイギリスでの財産処分と送金を委託する
  3. 私たちが残した遺産から、2のコストを払ってもらい、残りを兄がひとまず受け取る
  4. 兄がワタクシと旦那のヒトの家族に分配する

と言う方法がいいのでは?と思っていた。日本でイギリスの事務弁護士資格を持っている人に依頼するのは、たぶんイギリスにいる事務弁護士に依頼するより高額だろう。しかし兄⇔事務弁護士とのやりとりは日本語になるので、スムーズかもしれない。

というか、まあ私たち2人一緒に死んでしまうことは本当に少ない確率だし、たとえ遺産のほとんどが事務弁護士への手数料になったとしても、まあそれもしょうがないかも…ぐらいに思っていた。

しかし私たち2人が一緒に死亡した場合の遺言執行人&受託者としてCo-opを指名しておくと、 Co-opが死んでしまった私たちに代わり、我が家を売り払い、銀行口座を閉め、手数料を引いた残金を受益者にキャッシュで振り込む作業までを行うのだという。

なるほど。不慮の事故でワタクシたち2人が一緒に、しかも海外で死んでしまった場合、どんな場合でもたぶん兄に相当の迷惑を掛けることにはなるだろう。しかしCo-opにお任せしてしまった方が兄にかける負担は少なそう。

結局この点を重視して、Co-opで作成してみようと思ったのだ。

■決めたはいいが、まだまだ疑問が…

さてCo-opに決めたのはいいが、まだいろいろと疑問はある。

疑問1)2人が一緒に死んだ場合の受益者を、海外(日本)にいる兄に指定できるのか?
疑問2 ) 遺言書には住所や電話番号も記載す場合、連絡先が代わった場合は都度修正しなくてはならなのだろうか? その場合のコストは?
疑問3)Co-opが遺言執行人&受託者になった場合、手数料は一体いくら?

Co-opリーガルチームのサイトをつぶさに見てみたが、上記3点についての回答は探せなかった。

しかし今後のプロセスは、

①オンラインフォームに基本情報を書き込む
 ↓
②電話面談&支払い=作成の合意
 ↓
③情報&面談内容を元にCo-opが遺言書を作成
 ↓
⓸遺言書が郵送されてくる。確認し、修正箇所がなければサインして返却
 ↓
⑤Co-op側が最終確認
 ↓
⓺遺言書完成:オリジナルはCo-opが永年保管。コピーが郵送されてくる

↑上記のように進んでいく。②の電話面談でいろいろ聞ける上、そこで合意するまで支払いはない。

であれば、ここまでの段階でも分からないなりにかなり調べたことだし、もうこの辺で腹をくくって次の段階に進んでみよう。

そう決めて、とにかくオンラインフォームで遺言書作成申し込みと基本情報の書き込みを始めることにした。

===

次回は、あっけないほど簡単だった、オンライン申し込みと電話面談予約について。サクサク進んでいきました(続く)

【遺言書を作ってみようかと】
前の記事:①「きっかけは“女王様”」
次の記事:③「オンラインで申し込み」

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